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2025年度 (最新) 学院等開講科目 生命理工学院 生命理工学系 生命理工学コース

神経科学

開講元
生命理工学コース
担当教員
鈴木 崇之 / 一瀬 宏 / 宮下 英三 / 廣田 順二 / 黒田 公美 / 葭田 貴子 / 實吉 岳郎
授業形態
講義 (ライブ型)
メディア利用科目
-
曜日・時限
(講義室)
月1-2 / 木1-2
クラス
-
科目コード
LST.A410
単位数
200
開講時期
2025年度
開講クォーター
4Q
シラバス更新日
2025年10月20日
使用言語
英語

シラバス

授業の目的(ねらい)、概要

高次神経機能の基盤となる脳の発生や軸索伸長、神経回路形成のメカニズムを学習する。次に、知覚について、感覚神経や受容体の特徴および感覚器官と脳における情報処理について学習する。さらに、運動が脳内情報処理システムによりどのように制御されているか、不随意運動と随意運動に分けて解説する。また、ヒトに特徴的な言語を司る脳部位について知るとともに、非侵襲的脳機能イメージングの手法について解説する。最後に、脳の機能不全により起こる神経精神疾患の病態を紹介し、発症メカニズムについて最新の知見を含めて講義する。
低年次の授業で行う「基礎神経科学」の発展形として、同じく「カンデル神経科学」と「Behavioral Neuroscience」という教科書をもとに、より高度な脳の正常機能とその破綻を概説する。前半部では、神経分化・神経回路形成の分野において、この20年で次々と遺伝子が発見され、タンパク質の相互作用によって発生における神経細胞の挙動が明らかになってきたことを理解する。種の違いを超えた共通原理の理解をめざす。視覚・聴覚・触覚を含む知覚は、生体が外界についての情報を得るための主要なシステムである。各感覚における特定の刺激の検出を担う受容体の分子特性と感覚器官や脳における情報の伝達/処理について、それらの解明をもたらした研究を含めて理解する。運動制御の分野では、眼球や歩行運動など身近な行動制御を例に感覚入力と運動出力の間に介在するフィードバックメカニズムなどを理解する。ここまでは、脳が正常に働いた場合にフォーカスしてきたが、最後の部分では、脳の機能が異常となった場合に、どのような病気になり、どのような症状を引き起こすのかを理解する。このことによって、今社会的に問題となっている神経疾患の単純ではない発症機序をより正確に理解し、その解決に向けた糸口を探す。

到達目標

神経科学は近年飛躍的な進歩を遂げており、高次神経機能や精神神経疾患の理解も進んでいる。本授業では、基礎神経科学の授業で培った神経科学の基礎を基にして、より複雑な高次神経機能や脳の発生発達過程の分子メカニズムについて学習する。さらに、脳を理解することは我々自身の意識や意志決定の基盤を理解することであり、一般社会にも大きく貢献する可能性のある学問であることを理解する。具体的には、(1)学習と記憶、 気分障害神経発生、(2)回路形成、神経接続の形成・収れん、中枢神経系の再生(3)認知症、神経変性疾患などの神経疾患(4)個体の行動、脳幹・視床下部(5)知覚の符号化と視覚、聴覚、味覚、嗅覚(6)脊髄反射、眼球運動、歩行運動、姿勢制御、随意運動などの運動機能とその制御、の理解について、広範な知識の獲得と、将来神経関連の課題にぶつかった時の索引的な引出しを準備しておくことを目的としている。

キーワード

脳、神経系、神経回路形成、シナプス可塑性、中枢神経の再生、感覚神経、受容体、視覚、聴覚、皮膚触覚/痛覚、嗅覚、味覚、脊髄反射、眼球運動、歩行運動、姿勢制御、随意運動、不随意運動、言語中枢、神経疾患、学習と記憶、精神障害

学生が身につける力

  • 専門力
  • 教養力
  • コミュニケーション力
  • 展開力 (探究力又は設定力)
  • 展開力 (実践力又は解決力)

授業の進め方

Zoomを用いてライブ型授業を実施する。毎回の講義序盤で前回のまとめを行い、今回の要点を問題形式で示す。講義の終盤で序盤で示した要点を教示するとともに、必要に応じて質問・議論を行う。各回の学習目標をよく読み、予習・復習を行うこと。

授業計画・課題

授業計画 課題
第1回

学習と記憶 -記憶と海馬

学習と記憶のメカニズムと海馬の役割を理解する。
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第2回

気分障害 - うつ病、双極性障害、広汎性発達障がいなどを含む精神疾患群

気分障がい、統合失調症、広汎性発達障がいなどの病態を理解すると共に、治療に用いられている薬剤の作用機序を理解する
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第3回

神経発生と行動の発現1- 神経系のパターン形成と神経細胞の分化

種々の多様な神経細胞に分化していく過程を具体的なタンパク質とその制御レベルの違いを例を挙げながら説明できる。核転写から非対称分裂、細胞間コミュニケーションから細胞運命の獲得の系譜を説明できる。(カンデル神経科学第52,53章参照)
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第4回

神経発生と行動の発現2- 軸索の伸長とシナプス形成と洗練

神経細胞からどのような手がかりを頼りに軸索は伸びていき、到達したと認識し、シナプスを形成するのか、具体的なタンパク質を例示しながら説明できる。(カンデル神経科学第54,55章参照)

発達過程でシナプスは洗練化され、神経活性依存的な競合や刈込が起こる。その現象の背後にあるメカニズムを分子の言葉で説明できる。(カンデル神経科学第56章参照)
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第5回

神経発生と行動の発現3- シナプス可塑性と神経再生

発生後に神経系は外部の環境に対応して、シナプスを可塑的に変化させる。また神経再生の分子メカニズムを説明することができる。
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第6回

パーキンソン病と神経変性疾患の発症機序

パーキンソン病と神経変性疾患の発症機序を理解する。
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第7回

認知症、アルツハイマー病

認知症の病態とアルツハイマー病の病理学的変化、遺伝性アルツハイマー病の発症機序について理解する。
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第8回

行動1ー個体の行動

個体の行動とそれを可能にする神経系の制御機構を理解する。
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第9回

行動2 ー脳幹・視床下部による行動の制御機構

生命維持のために必要な脳幹・視床下部による行動の制御を学ぶ。(カンデル神経科学第40、41章参照)
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第10回

知覚の成立 - 知覚の符号化と視覚

知覚の符号化のロジックと分子メカニズムと視覚の制御を理解する
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第11回

知覚の成立- 聴覚、嗅覚、味覚における刺激受容の分子メカニズムについて理解する。(カンデル 26,27,28, 29章, 6th)

聴覚、嗅覚、味覚における刺激受容の分子メカニズムについて理解する。(カンデル 26,27,28, 29章, 6th)
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第12回

運動の構成と脊髄反射

運動における入力、出力、フィードバックの関係性を構成要素として理解する。また、脊髄反射の神経メカニズムを理解する。(カンデル神経科学第33、35章参照)
Behavioral Neuroscience, 9th edition

第13回

歩行、姿勢制御

歩行運動を司る中枢パターン発生器や姿勢制御のメカニズムを複数の感覚モダリティからの情報統合という視点から理解する。(カンデル神経科学第36、41章参照)

第14回

随意運動

適応的な随意運動のを神経メカニズムを理解する。(カンデル神経科学第37、38章参照)

準備学修(事前学修・復習)等についての指示

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

-Eric R. Kandel et al., カンデル神経科学 (Principles of Neural Science),
Behavioral Neuroscience, S. Marc Breedlove (著), Neil V. Watson, Sinauer Associates Inc; 第9版

参考書、講義資料等

-Eric R. Kandel et al., カンデル神経科学 (Principles of Neural Science), 日本語版監修 金澤一郎, 宮下保司, メディカル・サイエンス・インターナショナル
-ベアー, コノーズ, パラディーソ著 「神経科学―脳の探求」西村書店
Liqun Luo著, スタンフォード神経生物学, 監訳 柚﨑通介, メディカル・サイエンス・インターナショナル

成績評価の方法及び基準

各担当教員毎の小テスト、または、レポート課題。

関連する科目

  • LAH.T309 : 言語学C
  • LST.A346 : 基礎神経科学
  • HCB.M461 : 脳の計測
  • LST.A243 : 発生生物学
  • LST.A406 : 分子発生・進化学

履修の条件・注意事項

基礎神経科学(LST.A346)を履修していること、または同等の知識があること。