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2025年度 (最新) 学院等開講科目 情報理工学院 数理・計算科学系 数理・計算科学コース

数理・計算科学特論OA

開講元
数理・計算科学コース
担当教員
篠崎 裕司
授業形態
講義
メディア利用科目
-
曜日・時限
(講義室)
不明
クラス
-
科目コード
MCS.T424
単位数
200
開講時期
2025年度
開講クォーター
3Q
シラバス更新日
2025年7月9日
使用言語
日本語

シラバス

授業の目的(ねらい)、概要

本講義では、確率微分方程式(SDE: Stochastic Differential Equations)の数値解析に関する理論と応用について解説する。
まず、SDEの基礎事項を外観した上で、その数値計算問題(とくに数理ファイナンス・デリバティブ実務や機械学習などへの応用)に特有の課題を明らかにする。そのうえで、確率論的手法(SDEの離散近似やモンテカルロ法)、及び、偏微分方程式による方法(有限差分法、ツリー法)を解説し、その計算の効率化である分岐アルゴリズムや再結合測度法といった最新の話題に至るまで、数値計算の理論と実装の両面から体系的に紹介する。
本講義の特徴として、数学的な厳密性や直観的イメージ、数値的安定性、実装可能性、幅広い分野への応用可能性といった多角的観点で、SDEの数値解析を取り扱うことがあげられる。とくに、参加者が確率モデルの数値計算を実務や研究に応用できるようになることを目指すため、必要に応じてPythonなどによる簡易な数値実験も行う。測度論的確率論および確率微分方程式に触れたことがあるのが望ましいが、復習するので高度な予備知識は仮定しない。ただし、数学と、数値計算やプログラミングの双方に一定の関心を持つことが望ましい。

到達目標

SDEの数値解析について、基礎から先端的議論まで概観する。

キーワード

確率微分方程式、弱近似・強近似、確率論的手法(モンテカルロ法)、有限差分法、マリアバン解析、楠岡近似

学生が身につける力

  • 専門力
  • 教養力
  • コミュニケーション力
  • 展開力 (探究力又は設定力)
  • 展開力 (実践力又は解決力)

授業の進め方

座学を中心とするが、一部の回ではPythonによる数値実験・演習も取り入れる。

授業計画・課題

授業計画 課題
第1回 イントロダクション(10/3(金)5-8限) SDEの数値解析の全体像と数値計算分野における特徴、金融(数理ファイナンス・デリバティブ分野)や機械学習との接点を紹介する。
第2回 確率論とSDEの基礎(10/3(金)5-8限) 確率論とSDEの基礎を復習する。
第3回 確率論的手法:アルゴリズムの概要(10/16(木)5-6限, 9-10限) 確率論的手法(モンテカルロ・シミュレーション)を陽に解けないSDEに適用する際に必要となる、SDEの離散化手法の基礎的なアルゴリズム(オイラー・丸山法、楠岡近似など)について、その誤差評価と実行手順を解説する(場合よっては、pythonを用いた実装を行う)。
第4回 確率論的手法:離散近似の理論(10/16(木)5-6限, 9-10限) 前回紹介したSDEの離散化手法の誤差評価について、マリアバン解析などの現代数学を用いた議論を解説し、それらの理論的な結果と数値計算上の挙動の比較について解説する。
第5回 確率論的手法:疑似乱数・準乱数(10/17(金)5-8限) 確率論的手法(シミュレーション法)の基礎となる、疑似乱数・準乱数について、その生成方法と誤差評価を解説する。また、前回までで紹介した確率微分方程式の離散近似と合わせて、pythonを用いた実装を行う。
第6回 確率論的手法:準乱数の研究動向(10/17(金)5-8限) 準乱数に関する先端的研究の動向を紹介する。
第7回 偏微分方程式による手法:ファインマン・カッツ公式と有限差分法(10/24(金)5-8限) SDEの数値的手法は、確率論的手法と偏微分方程式を経由する手法に二分される。問題の性質(次元数など)によって使い分けられるが、この回では、後者の偏微分方程式を経由する手法について解説する。
第8回 偏微分方程式による手法:ツリー法の効率計算手法(10/24(金)5-8限) 先端的な話題として、数値的な効率と構造保存性を兼ね備えたツリー構造に基づくシミュレーション手法の理論と応用を解説する。
第9回 機械学習とSDEの数値計算①(10/31(金)5-8限) SDEの重要な応用先として、拡散モデル、深層学習などについて解説する。
第10回 機械学習とSDEの数値計算②(10/31(金)5-8限) SDEの重要な応用先として、拡散モデル、深層学習などについて解説する。
第11回 先端的話題①(11/14(金)5-8限) ここまでのトピックをまとめつつ、受講者の興味に応じて、先端的な話題(楠岡近似、ツリー法の計算効率化、準乱数の生成、Stochastic Volterra Equations、Forward-Backward SDEなど)を紹介する。
第12回 先端的話題②(11/14(金)5-8限) ここまでのトピックをまとめつつ、受講者の興味に応じて、先端的な話題(楠岡近似、ツリー法の計算効率化、準乱数の生成、Stochastic Volterra Equations、Forward-Backward SDEなど)を紹介する。
第13回 先端的話題③(11/20(木)5-6限, 9-10限) ここまでのトピックをまとめつつ、受講者の興味に応じて、先端的な話題(楠岡近似、ツリー法の計算効率化、準乱数の生成、Stochastic Volterra Equations、Forward-Backward SDEなど)を紹介する。
第14回 先端的話題④(11/20(木)5-6限, 9-10限) ここまでのトピックをまとめつつ、受講者の興味に応じて、先端的な話題(楠岡近似、ツリー法の計算効率化、準乱数の生成、Stochastic Volterra Equations、Forward-Backward SDEなど)を紹介する。

準備学修(事前学修・復習)等についての指示

教科書

教科書は指定しない。

参考書、講義資料等

講義中に提示する。

成績評価の方法及び基準

レポート課題による(若干、平常点を加味する可能性あり)

関連する科目

  • MCS.T212 : 確率論基礎
  • MCS.T332 : データ解析
  • MCS.T312 : マルコフ解析
  • MCS.T410 : 応用確率論
  • MCS.T333 : 情報理論
  • MCS.T403 : 統計的学習理論
  • MCS.T419 : 確率微分方程式

履修の条件・注意事項

測度論的確率論および確率微分方程式に触れたことがあるのが望ましいが、復習するので高度な予備知識は仮定しない。ただし、数学と、数値計算やプログラミングの双方に一定の関心を持つことが望ましい。講義には、PCを持参すること。