2026年度 (最新) 学院等開講科目 情報理工学院 情報工学系 知能情報コース
量子情報基礎
- 開講元
- 知能情報コース
- 担当教員
- 中田 芳史 / 柳澤 渓甫
- 授業形態
- 講義 (対面型)
- メディア利用科目
- -
- 曜日・時限
(講義室) - 火7-8 (W8E-306) / 金7-8 (W8E-306)
- クラス
- -
- 科目コード
- ART.T469
- 単位数
- 200
- 開講時期
- 2026年度
- 開講クォーター
- 3Q
- シラバス更新日
- 2026年10月2日
- 使用言語
- 英語
シラバス
授業の目的(ねらい)、概要
量子情報科学とは、原子や分子が持つ量子的な性質を情報処理に活用することを目指す学問である。量子現象を適切に利用することで、計算・通信・暗号などにおいて、従来は不可能と考えられていた情報処理が可能となることがあるため、次世代の情報処理技術として高い注目を集めている。本講義では、情報処理への応用という観点から量子論を解説したのち、基本的な量子プロトコルやアルゴリズムを紹介し、数値シミュレーションを通じて量子情報処理の直観を身につけることを目的とする。
具体的には、量子系の記述方法、重ね合わせ、エンタングルメントなどの基本概念から出発し、超高密度符号化や量子テレポーテーションなど、量子を用いることで初めて実現できる情報処理の例を解説する。さらに、より実用的な量子プロトコルとして、量子鍵配送やShorの素因数分解アルゴリズムを取り上げる。加えて、組合せ最適化問題に特化した計算方法である量子アニーリングとその実装についても扱い、量子計算機の現状を俯瞰的に理解する。最後に、現在の量子コンピュータの主要な課題である量子誤り訂正の基礎にも触れる。
講義は座学を中心とするが、量子回路シミュレータや量子アニーラを用いた数値演習を取り入れることで、受講者が自らプログラムを実装しながら量子情報処理に慣れることを目指す。
到達目標
本講義を履修することによって次の能力を習得する。
1. 量子論の基本的な原理を説明できる。
2. 量子的な性質を用いた基本的な量子プロトコル・アルゴリズムを説明できる。
3. 量子アニーリングのための組み合わせ最適化問題定式化ができる。
4. 量子誤り訂正の基本的な考え方と、簡単な具体例を説明できる。
5. 量子回路シミュレータや量子アニーラを動かすプログラミング手法を身に着ける。
キーワード
量子情報、量子通信、量子アルゴリズム、量子アニーリング、量子誤り訂正、量子回路シミュレータ
学生が身につける力
- 専門力
- 教養力
- コミュニケーション力
- 展開力 (探究力又は設定力)
- 展開力 (実践力又は解決力)
授業の進め方
講義は座学を中心とするが、量子回路シミュレータや量子アニーラ等を用いた数値演習も行う。
授業計画・課題
| 授業計画 | 課題 | |
|---|---|---|
| 第1回 | 量子論の導入1(中田) |
閉じた量子系の枠組み(純粋状態・ユニタリ時間発展・射影測定)を理解する。 |
| 第2回 | 量子論の導入2(中田) |
閉じた量子系の枠組み、および量子特有の現象を理解する。 |
| 第3回 | 量子論の一般的な枠組み(中田) |
量子系の一般的な枠組み(混合状態・量子チャンネル・POVM)を理解する。 |
| 第4回 | 量子回路シミュレータ演習1(中田&柳澤) |
Qiskitを用いた量子系の数値シミュレーションを習得する。 |
| 第5回 | 量子回路モデル、及び、量子相関と基礎通信プロトコル(中田) |
量子回路モデルでの量子計算と量子相関を用いた量子通信プロトコルを理解する。 |
| 第6回 | 量子アニーリングの基礎(柳澤) |
量子Isingモデルおよび量子アニーリングについて理解する。 |
| 第7回 | 量子鍵配送(中田) |
量子通信路を用いた乱数共有プロトコルと、暗号への応用を理解する。 |
| 第8回 | 二次制約無し二値最適化 (QUBO)(柳澤) |
IsingモデルとQUBOの関係性を知り、実問題への適用方法を習得する。 |
| 第9回 | 量子回路シミュレータ演習2(中田&柳澤) |
基礎通信プロトコルあるいは量子鍵配送を数値シミュレーションで理解する。 |
| 第10回 | 実問題のQUBO定式化(柳澤) |
整数値の二値変数表現や等式制約の二次関数化、ブラックボックス最適化などの技法を習得する。 |
| 第11回 | 量子アルゴリズム(中田) |
Shorの素因数分解アルゴリズムと、グローバーの探索アルゴリズムを理解する。 |
| 第12回 | 量子アニーリングの演習(柳澤) |
Fixstars Amplifyを用いてQUBO定式化を行い、その解を得る方法を習得する。 |
| 第13回 | 量子誤り訂正(中田) |
量子誤り訂正の基礎を学び、基本的な符号を理解する。 |
| 第14回 | 量子回路シミュレータ演習3(中田&柳澤) |
数値シミュレーションを通して量子誤り訂正符号を理解する。 |
準備学修(事前学修・復習)等についての指示
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,各回、授業内容に関して、予習30分、復習(課題含む)120分を目安に行うこと。
教科書
講義や実習の資料は、適宜配布する。
参考書、講義資料等
• 石坂 智 ・ 小川 朋宏・ 河内 亮周・ 木村 元・ 林 正人 著、量子情報科学入門 第2版、共立出版、2024
• 中田 芳史 著、量子情報理論、朝倉書店、2024
• 田中 宗 監修 Pythonによるアニーリングマシン入門 – PyQUBOで解く最適化問題、共立出版、2025
• M. A. Nielsen and I. L. Chuang, “Quantum Computation and Quantum Information”, Cambridge university press, 2010
• 訳書:木村 達也 訳 量子コンピュータと量子通信 I~III、オーム社、2025
• Shu Tanaka, Ryo Tamura, Bikas K. Chakrabarti. Quantum spin glasses, annealing and computation, Cambridge University Press, 2017.
• 訳書:田中 宗、田村 亮 訳 量子アニーリングの物理、森北出版、2023
成績評価の方法及び基準
学生の知識を小課題で確認し、問題解決への応用能力を期末レポート課題 によって評価する。配点は期末レポート課題が主で、講義途中での小課題の提出状況も参考にする。
関連する科目
- CSC.T241 : 計算基礎論
- CSC.T242 : 確率論・統計学
- CSC.T271 : データ構造とアルゴリズム
- CSC.T351 : システム解析
- CSC.T342 : 最適化基礎
履修の条件・注意事項
特になし