2024年度学院等開講科目理学院化学系

量子化学

開講元: 化学系
担当教員: 大島康裕 / 山﨑優一
授業形態: 講義 (対面型)
メディア利用科目: -
曜日・時限 (講義室): 月1-2 (M-B45(H105)) / 木1-2 (M-B45(H105))
クラス: -
科目コード: CHM.C332
単位数: 200
開講時期: 2024年度
開講クォーター: 3Q
シラバス更新日: 2025年3月14日
使用言語: 日本語

シラバス

授業の目的（ねらい）、概要

　本講義は、「量子化学序論」で習得した量子化学の基礎をもとに更に学習を進めて、原子・分子の量子力学的状態、ならびに、光との相互作用に関する系統的理解を習得することを目的としている。具体的には以下の(A)と(B)に内容を大別して、講義を行う。
(A) 光学遷移と分子の量子状態：時間依存の摂動論を学習し、原子・分子における光の吸収・発光過程に関する基本法則を理解する。さらにこれらの基礎知識をもとにして、分子のエネルギー準位とスペクトルの詳細を理解する。
(B) 角運動量と原子の量子状態：角運動量に関する量子力学の基礎原理を学習し、角運動量演算子を用いた計算に習熟するとともに、原子の量子状態と光学遷移の詳細を理解する。

到達目標

本講義を履修することによって、以下の２つの能力を習得する。
１）角運動量や摂動論などの量子化学における基礎原理の利用法を理解し、原子・分子の微視的振る舞いに関する各種問題に対して適切に応用すること。
２）原子・分子の状態や光・磁場等の外的要因への応答に関する量子論的理解に立脚して、原子・分子の微視的構造や反応性を探求する方法論を理解すること。

キーワード

物理化学、量子力学、角運動量、光学遷移、原子・分子スペクトル

学生が身につける力

専門力
教養力
コミュニケーション力
展開力 (探究力又は設定力)
展開力 (実践力又は解決力)

授業の進め方

(1) 各回で初めに前回の簡単な復習を行う。
(2) 講義の後半で、その日の授業内容に関連した簡単な演習問題に取り組む。
(3) 授業計画の項目について、授業前に予習しておくこと。

授業計画・課題

	授業計画	課題
第1回	(A) 光学遷移と分子の量子状態 (1) 時間依存の摂動論	波動関数の１次の補正項を示すことができる。定常的な摂動によるエネルギーと波動関数の変化について説明できる。
第2回	(B) 角運動量と原子の量子状態 (1) 角運動量と昇降演算子	角運動量の交換関係を説明できる。昇降演算子の行列要素を導出できる。
第3回	(A) 光学遷移と分子の量子状態 (2) 光と物質の相互作用、光学遷移レートの導出	光学遷移に関する相互作用項を説明できる。 Fermiの黄金律を説明できる。
第4回	(B) 角運動量と原子の量子状態 (2) 角運動量の合成	２つの角運動量から合成された全角運動量の大きさを計算できる。角運動量のベクトルモデルとは何かを説明できる。
第5回	(A) 光学遷移と分子の量子状態 (3) 誘導吸収・放出と自然放出	アインシュタインのA係数・B係数について説明できる。 LASERの原理を説明できる。自然放出の波長依存性について説明できる。
第6回	(B) 角運動量と原子の量子状態 (3) スピン多重度、軌道角運動量とスピン角運動量	１重項および３重項スピン関数を示すことができる。軌道角運動量とスピン角運動量の合成を説明できる。
第7回	(A) 光学遷移と分子の量子状態 (4) 分子のエネルギー準位とスペクトル概論、回転スペクトル	電子・振動・回転エネルギーの大小関係を説明できる。回転スペクトルと分子構造の関係を説明できる。
第8回	(B) 角運動量と原子の量子状態 (4) 軌道・スピン角運動量の合成と項記号	２つの軌道運動量間の交換関係を説明できる。第２周期までの原子について、その項記号を示すことができる。
第9回	(A) 光学遷移と分子の量子状態 (5) 振動スペクトル	振動遷移に対する選択則を示すことができる。ラマン過程とは何か、説明することができる。
第10回	(B) 角運動量と原子の量子状態 (5) スレーター行列式、LS結合	Heの励起状態についてスレーター行列式を示すことができる。スピン軌道相互作用の演算子を説明できる。
第11回	(A) 光学遷移と分子の量子状態 (6) 電子スペクトル	窒素分子の電子状態について説明できる。 Franck-Condon原理について説明できる。
第12回	(B) 角運動量と原子の量子状態 (6) 原子の吸収・発光の選択則	水素原子の光学遷移の選択則を説明できる。アルカリ金属原子のD線における分裂を説明できる。
第13回	(A) 光学遷移と分子の量子状態 (7) 電子励起状態の緩和過程	蛍光寿命と無輻射遷移の関係を説明できる。内部転換および項間交差について説明できる。
第14回	(B) 角運動量と原子の量子状態 (7) 原子・分子の磁気的性質	電子スピン共鳴(ESR)の原理を説明できる。超微細分裂とは何かを説明できる。

準備学修(事前学修・復習)等についての指示

学修効果を上げるため，教科書や配布資料等の該当箇所を参照し，「毎授業」授業内容に関する予習と復習（課題含む）をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

特になし。

参考書、講義資料等

マッカーリ・サイモン著、物理化学（上）、東京化学同人　
アトキンス著、物理化学、東京化学同人
アトキンス著、量子化学、東京化学同人

成績評価の方法及び基準

量子力学の基礎原理、および、その原子・分子系への応用に関する理解度によって評価する。
成績評価は、試験と、講義で出題する課題へのレポートによる。評価基準は、レポート40%、期末試験60%。

履修の条件・注意事項

特に無し。量子化学序論などの関連科目を履修していることが望ましい。

連絡先 (メール、電話番号) ※”[at]”を”@”(半角)に変換してください。

大島康裕 (ohshima[at]chem.titech.ac.jp)
山﨑優一 (yamazaki[at]chem.titech.ac.jp)

オフィスアワー

メールで予約すること。
大島康裕 (西4号館102B号室)
山﨑優一 (西4号館502号室)