2022年度 学院等開講科目 物質理工学院 材料系
統計力学(C)
- 開講元
- 材料系
- 担当教員
- 神谷 利夫 / 松石 聡
- 授業形態
- 講義 (対面型)
- メディア利用科目
- -
- 曜日・時限
(講義室) - 火7-8 (S7-201) / 金7-8 (S7-201)
- クラス
- -
- 科目コード
- MAT.C203
- 単位数
- 200
- 開講時期
- 2022年度
- 開講クォーター
- 3Q
- シラバス更新日
- 2025年7月10日
- 使用言語
- 日本語
シラバス
授業の目的(ねらい)、概要
本講義では、現象論的に熱平衡状態を扱う熱力学の復習から始め,電子・原子論から熱平衡状態を扱う熱統計力学について解説する.気体状態の原子・分子などの性質を扱うMaxwell-Boltzmann分布を習うことにより統計力学の考え方に慣れたのち、より一般的な古典統計力学および、固体中の格子振動や電子の振舞を記述するための量子統計力学について学習する。さらに、それらを固体物性の実際の問題に対してどのように応用するかを学ぶ。
物質の電気・光学物性などは、非常に多くの粒子-電子、原子、分子、フォノン、光子-がそれぞれ相互作用した結果として生じる。多数の粒子の運動を個別に扱うことは実際上は不可能であるため、統計的な取扱いを導入することにより、微視的な物理方程式から現象論的な物性を調べることが必要になる。このように、統計力学は固体物性を理解する上での基礎的な科目であり、将来材料科学の研究を行う上で不可欠な知識である。しっかり習得してほしい。
到達目標
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1) 多粒子系を統計的に扱う考え方を理解する。
2) 微視的理論である統計力学と現象論的理論である熱力学の関係を理解し、状況に応じて使い分ける能力を習得する。
3) 異なる量子統計がどのような場合に適応可能かを判断し、実際の簡単な問題に応用できる能力を習得する。
キーワード
エルゴード仮説、Maxwell-Boltzmann統計、Boltzmann統計、Fermi-Dirac統計、Bose-Einstein統計、熱力学関数、自由エネルギー、分配関数
学生が身につける力
- 専門力
- 教養力
- コミュニケーション力
- 展開力 (探究力又は設定力)
- 展開力 (実践力又は解決力)
授業の進め方
講義の進行に応じ、演習問題を解いてもらいます。毎回の講義の最初に、演習問題の解答を含め、質問時間を設けます。その後各回の講義の説明を進めますが、質問は随時受け付けますので、気軽に質問してください。
授業計画・課題
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 熱力学第一法則 | 熱と仕事の関係を表す熱力学第一法則の理解 |
第2回 | 熱力学第二法則、熱力学関数 | 不可逆過程を支配する熱力学第二法則および主要な熱力学関数の理解 |
第3回 | 気体分子運動論 | 質点の運動方程式から、熱平衡状態にある分子気体の運動について学ぶ |
第4回 | 古典統計力学の基礎 I (気体分子運動論とMaxwell-Boltzmann分布) | 熱平衡状態において、気体分子の速度が従う分布関数を導く |
第5回 | 古典統計力学の基礎 II (微視的状態の数、エルゴード仮説、Boltzmann分布) | エルゴード仮説を導入し、位置-運動量から成る位相空間における分布関数を求める |
第6回 | カノニカル分布とグランドカノニカル分布 | 気体分子間に相互作用がある場合の分布関数を求める |
第7回 | 復習 | 第1回から6回までの講義内容について復習する |
第8回 | 量子統計力学の基礎 I (Pauliの排他律、Fermi-Dirac分布) | 粒子の交換に対し、波動関数が非対称であるFermi粒子が従う量子統計について学ぶ |
第9回 | 量子統計力学の基礎 II (Bose-Einstein分布) | 粒子の交換に対し、波動関数が対称であるBose粒子が従う量子統計について学ぶ |
第10回 | 理想Bose気体、固体の比熱 (Einstein、Debyeの比熱式) | 格子振動に関するEinsteinモデルおよびDebyeモデルから、固体の比熱式を導く |
第11回 | 光子と熱輻射 | Bose-Einstein統計を熱輻射に応用し、物性を導く |
第12回 | 理想Fermi気体、金属中の電子 | 電子の集団を理想フェルミ気体とする自由電子模型により、金属の物性を導く |
第13回 | 半導体中の電子、Fermi準位、ドーピング | 周期ポテンシャルによりエネルギーギャップが形成された半導体における物性を導く |
第14回 | スピン系の磁化率 | Fermi-Dirac統計をスピン系に応用し、磁気物性を導く |
準備学修(事前学修・復習)等についての指示
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
教科書
教科書は講義中に指示する。必要に応じて資料を配布する。
参考書、講義資料等
『熱統計力学』阿部龍蔵著,裳華房、『統計力学入門』高橋康著,講談社サイエンティフィク、
『基礎演習シリーズ 熱統計力学』阿部龍蔵著,裳華房、『大学演習 熱学・統計力学』久保亮五編,裳華房 など
成績評価の方法及び基準
講義中に行う演習および期末試験で評価する.
関連する科目
- MAT.A204 : 材料熱力学
- MAT.P204 : 物理化学(化学熱力学)
- MAT.P301 : 固体物理学(格子系)
- MAT.P303 : 固体物理学(電子系)
- MAT.P205 : 物理化学(相平衡)
履修の条件・注意事項
材料熱力学(MAT.A204)を履修していること,または同等の知識があること。
統計力学(M)(MAT.M202)と物理化学(統計力学)(MAT.P305)とは重複履修禁止
連絡先 (メール、電話番号) ※”[at]”を”@”(半角)に変換してください。
神谷利夫 kamiya.t.aa[at]m.titech.ac.jp
松石 聡 matsuishi.s.aa[at]m.titech.ac.jp
オフィスアワー
(神谷、松石)メールで事前予約すること。