2023年度 学院等開講科目 教養科目群 文系教養科目
文系エッセンス23:医療から見る社会
- 開講元
- 文系教養科目
- 担当教員
- 香川 由美
- 授業形態
- 講義 (対面型)
- メディア利用科目
- -
- 曜日・時限
(講義室) - 水3-4 (J2-203(J221))
- クラス
- -
- 科目コード
- LAH.S501
- 単位数
- 100
- 開講時期
- 2023年度
- 開講クォーター
- 3Q
- シラバス更新日
- 2025年7月8日
- 使用言語
- 日本語
シラバス
授業の目的(ねらい)、概要
本科目では、健康および医療を切り口に、その背景にある社会問題を紐解き、課題についてグループワークを交えながら考察を行っていく。健康および医療という分野は、人間の”病”の側面を扱う分野でもある。”病”を持つ当事者から見える社会の見え方は、自らの日常とどの様に異なるのか、そこにはどの様な問題が潜んでいるのか。普段”健康”であるからこそ気づきにくい問題について、医学系論文やメディアコンテンツ、患者の語りの動画などを用いて講義を行う。また、グループディスカッションを行い、日常を”病”の視点から読み解いていく。
”病”といっても、そこに潜んでいるのは身体的・医学的な問題だけとは限らない。患者やその家族の心理的な問題や、患者が学校生活や仕事を続けるうえで生じる社会生活上の課題、病気や障害に対する私たちの意識/無意識の偏見や無理解から生じる差別といった社会的課題も存在する。また、視点を個人レベルから社会レベルに変えると、国や地域の政策や街づくりの方針によって、そのコミュニティで暮らす人の健康が高められたり、逆に健康格差が広がったりするといった社会的課題も挙げられる。本科目の講義では、受講生が一つのテーマについて様々な観点から課題を捉える体験ができるよう、医学、公衆衛生学、健康行動学、医療社会学、医療コミュニケーション学など、医療を取り巻く学際的な知見を紹介していきたい。
本科目のねらいは、①1つの問題を考える際にも様々な視点や意見があることを学び、物事を俯瞰的に把握する力を身につけること、②自ら考えたことを自身の言葉で相手に伝えるコミュニケーション能力を身につけること、③グループで議論することで、問題の本質を探る課題設定力を身につけること、の3点にある。これらの能力の修得は、自立した一人の社会人として必要な教養力を育むだけでなく、自分が得た知見や経験を生かして実社会における問題の解決に取り組むために有用な展開力(探求力・課題設定力)を向上させることにも繋がる。そのため、民間企業や公的機関へ就職する人、大学で研究を続ける人の両者にとって将来にわたって有用である。自身が身につけた専門性と社会を結びつけ、どう社会の文脈に価値を生み出すかを考える力を身に付けたい方の履修を歓迎する。
到達目標
本講義を履修することにより以下の能力を習得することを目標とする。
・医療および医学を切り口に、実社会における課題について多角的に捉える事ができる
・問題に対して主体的に考え、論理的な思考で分析し、複数の解決策を提示できる
・自らの知見や経験を踏まえて考えた意見を周囲に対して論理的に説明する事ができる
・他者の意見を聞き、意思疎通し、合意形成することができる
・ “議論を深め価値を創造する”という文系特有のプロセスを理解し、授業で扱ったテーマ以外の社会課題を検討する際にも展開・応用する事ができる
実務経験のある教員等による授業科目等
実務経験と講義内容との関連 (又は実践的教育内容)
担当教員は、当事者の立場で患者会活動や、患者や障害者が体験談を講演するNPO法人の運営に携わった経験を有する。本授業では、教科書の内容だけでなく当事者たちの視点を紹介し、実社会における医療をとりまく意見の多様性を学ぶことを目指したい。
キーワード
健康と医療、社会的課題、医学、公衆衛生学、健康行動学、医療社会学、医療コミュニケーション学
学生が身につける力
- 専門力
- 教養力
- コミュニケーション力
- 展開力 (探究力又は設定力)
- 展開力 (実践力又は解決力)
授業の進め方
本授業は、第1回から第7回まで対面形式で実施する(使用言語は日本語)。
第1回から第4回は講義を中心に行い、第5回から第7回はグループワークを行う。グループワークは3回の授業にわたって同じメンバーで実施し、選択したテーマに関する情報収集や分析を分担して問題の本質を探るためのディスカッションを行う。グループ分けは、受講者がより主体的に参加できることを目指し、第1回から第4回の講義で扱ったテーマの中から好きなテーマを1つ選んでもらい、同じテーマを希望したメンバーからなる3名~4名のグループを作成する。
授業計画・課題
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | (1)授業ガイダンス:本授業の目的、身に付く力、授業の進め方、成績評価について (2)講義1:健康と医療を取り巻く社会的課題 健康と医療を取り巻く社会的課題を考える際の視点(個人レベル、対人レベル、社会レベル)、健康の社会的決定要因、健康格差などについて概観する | 講義内容を復習すること |
第2回 | 講義2:個人レベルから見た健康と医療の課題 個人の知識・信念・行動が健康へ及ぼす影響、患者の視点と行動、ヘルスリテラシーなどについて概観する | 講義内容を復習すること |
第3回 | 講義3:対人関係レベルから見た健康と医療の課題 医療場面における対人コミュニケーションの特徴と課題、生活場面における健康に関する対人コミュニケーションの特徴と課題などについて概観する | 講義内容を復習すること |
第4回 | (1)講義4:社会レベルから見た健康と医療の課題 メディア情報の健康への影響、リスクコミュニケーション、ヘルスプロモーション活動などについて概観する (2)第5回~第7回のグループワークの説明とグループ分け | 講義内容を復習すること |
第5回 | グループワーク(1) | グループメンバーと分担して情報収集や課題分析を行う。 |
第6回 | グループワーク(2) | グループワークの続き |
第7回 | グループワーク(3) | グループワークで話し合った内容にもとづいて、最終レポートを作成する |
準備学修(事前学修・復習)等についての指示
学修効果を上げるため、配布資料や参考書等の該当箇所を適宜参照し「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
教科書
必要に応じて指定する
参考書、講義資料等
参考書:公衆衛生がみえる2022-2023(Medic Media)、保健医療専門職のためのヘルスコミュニケーション学入門(大修館書店)、よくわかる医療社会学(ミネルヴァ書房)、健康格差対策の進め方 効果をもたらす5つの視点(医学書院)
講義資料:授業にてハンドアウトを配布する
成績評価の方法及び基準
(1)講義の理解度:第1回~第4回の授業ごとに講義の理解度を確認する小テストを実施する(成績全体の40%)
(2)グループワークへの貢献度:第5回~第7回の授業ごとにグループワークへの参加を確認する(成績全体の30%)
(3)最終レポート:グループワークに関するレポートを作成する(1,000文字程度)(成績全体の30%)
関連する科目
- LAH.S401 : 文系エッセンス1:人間力を育む
履修の条件・注意事項
・事前に身につけているべき専門知識や技能は特にない。
・授業およびグループディスカッションは日本語を使用する。レポートは英語でも受け付ける。
その他
この科目は、修士課程500番台の文系教養科目です。
東工大では、学士から博士後期課程まで継続的に教養科目を履修する「くさび型教育」を実践しています。番台順に履修することが推奨されており、修士課程入学直後の学期(4月入学者であれば1・2Q、9月入学者であれば3・4Q)に履修申告できる文系教養科目は400番台のみです。500番台文系教養科目は、入学半年してから(4月入学者であれば入学した年の3・4Qから、9月入学者であれば入学した翌年の1・2Qから)履修可能となります。